セネガル弾圧激化が映す西アフリカの人権後退

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2026年3月11日、セネガル国民議会は刑法第319条を改正し、同性間の性行為に対する最高刑を懲役10年へと倍増させた上、性的少数者や支援団体の活動を広報・促進する行為を全面的に犯罪化した。国際人権組織のヒューマン・ライツ・ウォッチは報告書を通じ、同法成立後に同国内で性的少数者に対する治安当局の摘発が急速に激化している実態を告発した。各地で大規模な一斉拘束や強制的なHIV検査が横行し、弁護権行使への著しい制約が加わったことで、西アフリカの同国では深刻な恐怖と社会的分断が広がっている。
国際的な権利擁護団体「HIVジャスティス・ネットワーク」の集計によると、2026年2月から7月までの間に300人以上が逮捕され、その中には教員、学生、医療従事者などが含まれている。直近では、35人が「故意によるエイズ感染の伝播」という虚偽の容疑で不当に勾留される事態も生じた。刑事罰の適用拡大により、暴行や私刑の脅威を避けるために住居を離れて潜伏し、交流サイトのアカウントを閉鎖せざるを得ない当事者が続出している。さらに、性的少数者を擁護する表現全般が禁止されたことで、被疑者を担当する刑事弁護士自身が「同性愛を促進した」として訴追対象にされかねない危険に直面しており、適正手続きの根幹が揺らいでいる。
セネガルで起きている人権の危機は個別国家の特異な事象ではなく、西アフリカおよびサヘル地域一帯で進行する組織的な法制度改悪の一環と位置付けられている。過去数年の間に、ニジェール、マリ、ブルキナファソ、ガーナなどの各国政府が相次いで同性愛処罰の厳罰化に踏み切り、集会や表現の自由を奪う法案を推進してきた。特にブルキナファソでは1996年に同性間性行為が合法化されていたものの、2022年の軍事クーデターで権力を握ったイブラヒム・トラオレ政権が国家主権の防衛と欧米の文化的影響力への抵抗を名目に再犯罪化を強行した。2026年8月にガーナで開催された「家族の価値に関するアフリカ議会間会議」では、性的多様性をアフリカ諸国に対する文化的な再植民地化と決めつけ、国家間の連携を呼びかける憲章草案が作成された。
西アフリカ全域で広がる法規制強化の深層について、汎アフリカ平権組織などは、国内の政治的ご都合主義と海外の保守勢力による資金援助が結びついた結果であると分析している。政権幹部が国内の宗教的・民族的分断から目を逸らすための格好の標的として性的少数者を敵視する一方、米欧の極右・保守系団体がアフリカへ多額の資金や言説、運動戦術を送り込み、反性的少数者運動や反中絶活動を組織的に後押ししている実態が明らかになっている。人権団体は、主権の回復や伝統的価値という言葉が普遍的人権を侵害するための口実として利用されていると警鐘を鳴らし、現地で救援活動を続ける草の根組織に対する国際社会の早急な支援と連帯を強く求めている。
アフリカ編集部:イマニ・マケナ
出典:ヒューマン・ライツ・ウォッチおよび地域専門報道を総合
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